相談事例
CASE
2016.7 松尾 の回答
株主名簿は、「会社の所有者は誰か」、「会社の議決権は誰が何個行使できるか」、「会社の剰余金の配当は誰がどれだけ受けることができるか」等を明らかにするために、株式会社に作成および備え置きが義務付けられた帳簿(電磁的記録を含む)です。つまり、株主名簿がないと、株主の権利は守られず、会社は責任を問われることになります。
株式の譲渡は原則的には自由です。日々株主が変化する上場企業では、事務処理の効率化、法的安定化を図るため株主名簿管理人を置き適正に管理しています。ところが、中小企業においては、株主名簿が適法に備置きされていないところが少なからずあり、「株主名簿はどこにいけば入手できるの?」と聞かれることもあります。「設立当初から株主に変動がなければ、原始定款(会社設立時の定款)に記載がある場合があります。」「現時点のものは確定申告書の別表二に記載があるはずです。」とお答えしますが、設立後の増資や株式の贈与、売買、株主の相続等が必ずしも正しく反映されていないこともあります。
株主名簿には、以下の内容が記載されています。
① 株主の氏名又は名称及び住所
② ①の株主が有する株式の数
③ ①の株主が株式を取得した日
④ ②の株式に係る株券の番号(株券発行会社であり、実際に株券が発行されている場合)
株主及び債権者は、会社の営業時間内であればいつでも、理由を明らかにした上で、会社が本店に備え置く株主名簿の閲覧または謄写の請求をすることができます。株式会社は株主名簿に基づき、株主が届けた住所宛に通知や催告を行えばよく、通常、到達すべきであった時に到達したものとみなされますので、株主が株主権を行使するためには、住所等が変わったらすぐに変更届けをするべきです。
また、株式を新たに取得した者は株主名簿に登録することを会社に請求できます。これを名義書換といいます。株券発行会社の場合は、株券を占有する者は、適法な権利者と推定されますので、会社に対して、株券を呈示すれば会社は名義書換を拒むことができません。株式会社にとっても株主名簿に登録された者を株主として扱えば、たとえその者が真の株主でなくても、原則免責されます。
一方、株券不発行会社の場合は、利害関係人の利益を害するおそれがないものとして法務省令で定める場合を除き、株主名簿に記載された者と株式取得者が共同でする場合のみ名義書換請求が認められます。
もっとも、ほとんどの中小企業には、株式の譲渡について会社の承認を必要とする旨の定款の定め(譲渡制限)があるので、会社の承認を得ることができなければ株式を譲渡しても名義書換を請求することはできません。
以上のように、株主名簿は株主にとっても会社にとっても必要不可欠なものです。