相談事例
CASE
2015.7 山上 の回答
2015年(平成27年)5月1日施行の会社法改正により社外取締役及び社外監査役の定義が変わり、「非業務執行取締役等」という概念が生まれました。
社外取締役は、過去のしがらみや現在の業務執行からは独立した公正中立的な立場で経営者を監督する役割が期待されています。
これまで社外取締役は「株式会社の取締役であって、当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人でなく、かつ過去に当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人となったことがないものをいう」とされ、社外監査役については「株式会社の監査役であって、過去に当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与若しくは執行役又は支配人その他の使用人となったことがないものをいう」とされていました。
改正前は「過去に」一度でも会社及び子会社の業務執行に従事した者は社外取締役になれませんでした。
しかしながら、過去に当該会社の業務執行に携わったことがあったとしても、その後当該会社や子会社との関係が切れていれば、社外取締役としての職務ができるのではないかとの指摘や、会社の業務執行者の親族や親会社・兄弟会社の業務執行者が社外取締役になると公正中立の立場で経営者に対する監督を期待することは難しいとの指摘もありました。
そこで、今回の改正により社外取締役の要件を変更し、「当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人(業務執行取締役等)でなく、かつ、その就任前10年間当該会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと」等になり、「過去」の要件を「就任前10年間」に緩和する一方、親会社の関係者や兄弟会社の業務執行者、会社の一定の業務執行者等の近親者などは、社外取締役になることはできないことになりました。社外取締役とともに、社外監査役についても同様に要件が改正されています。
この社外取締役・社外監査役の定義の変更に伴い、責任限定契約(会社法第427条)の対象も「社外取締役、会計参与、社外監査役又は会計監査人」から「取締役(業務執行取締役等であるものを除く)、会計参与、監査役又は会計監査人」(非業務執行取締役等といいます。)へと変わり、「社外」かどうかではなく、「業務執行」を行うかどうかが基準となりました。
これにより責任限定契約を根拠とした社外取締役及び社外監査役の登記については、登記事項ではなくなりました。附則22条2項により、「当該登記に係る取締役又は監査役の任期中に限り、当該登記の抹消をすることを要しない」とありますので、直ちに登記を抹消する必要はありませんが、任期中でも任意に抹消することは可能です。
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