相談事例
CASE
2023.8 櫻井の回答
日本の所得税法では、国内に「住所」を有し、または、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人を「居住者」といい、「居住者」以外の個人を「非居住者」と規定しています。非居住者や外国法人(以下、「非居住者等」といいます。)から日本国内にある不動産を購入する場合、買主(法人・個人を問わず)には原則的に不動産取得税等の源泉徴収義務があります。具体的には、買主は非居住者等に対して売買代金を支払う際に、売買代金の10.21%を所得税及び復興特別所得税として源泉徴収し、翌月10日までに納税しなければなりません。居住者と非居住者の区分に国籍は関係ありません。例えば、売主が日本人であっても海外赴任中であるなど非居住者に該当すれば買主は源泉徴収する必要があります。
不動産の売買代金 1億円
3月末支払い: 手付金1,000万円
6月末支払い: 残代金9,000万円 と 固定資産税の清算金10万円
① 3月末に1,000万円から源泉徴収分102万1,000円を差し引いた897万9,000円を売主に支払う。
② 4月10日までに源泉徴収分102万1,000円を納税する。
③ 6月末に残代金と固定資産税の清算金の合計額9,010万円から源泉徴収分919万9,210円を差し引いた8,090万790円を売主に支払う。
④ 7月10日までに源泉徴収分919万9,210円を納税する。
事例のように複数回に支払いが分かれる場合、源泉徴収分の納付は最後にまとめて行えばよいと誤解されることがありますが、支払いの都度行う必要があります。納付期限に遅れると、買主に対して不納付加算税や延滞税が課されるため注意が必要です。
上記の事例で買主が誤って源泉徴収をせずに売主に対し売買代金等の全額1億10万円を支払ってしまった後、売主と連絡が取れなくなった場合や源泉徴収分の返金を受けることができなった場合、源泉徴収税額の納税義務者である買主は、売主が負担すべき源泉徴収税1,022万210円と支払いが遅延した場合の不納付加算税や延滞税を支払う必要があります。
買主(個人)が本人または親族の居住用として土地等(土地または土地の上に存する権利、建物およびその付属設備もしくは構築物)を購入した場合で、その土地等の譲渡対価が1億円以下である場合、買主は源泉徴収をする必要はありません。逆に言えば、売買代金が500万円であっても賃貸用ワンルームマンションの取引であれば、源泉徴収をする必要があります。尚、譲渡対価には手付金や中間金、残代金、固定資産税の清算金も含まれます。
また、売主・買主ともに非居住者等の場合は源泉徴収をする必要はありません。
非居住者等が所有する不動産の賃借人も同様の源泉徴収義務があり、事業用として借りる場合や法人が借りる場合などに賃料の20.42%を源泉徴収する必要があります。ただし、免除規定として、賃借人(個人)が本人または親族の居住用として不動産を賃借した場合、賃借人は源泉徴収をする必要はありません。