相談事例

CASE

公印確認とアポスティーユについて教えてください。外国に提出する日本の公文書について、必要となる手続きの概要が知りたいです。

2023.7   田代の回答

外国での各種手続き(婚姻、離婚、出生、査証取得、会社設立、不動産購入など)で法務局が発行する会社の登記事項全部証明書や市町村で発行される戸籍など日本の官公署が発行した公文書を外国の官公署や取引先に提出する際、「公印確認」という手続きを要求されることが多いです。会社の登記事項全部証明書には法務局の登記官のハンコ(電子印)、戸籍謄本には市長や区長のハンコ(電子印)が押してありますが、これらの書類を外国の機関に提出しても、受け取った側では本当に公的機関が発行した文書であるかどうかの判別がつきません。そのため、「本物のハンコ(電子印)ですよ」という日本の外務省のお墨付き(証明)を受ける手続きが公印確認です。

ところが、この公印確認を受けた書類をそのまま提出しても、受け取った外国側では本当に日本の外務省の証明(公印確認)であるかどうかの判別がつきません。そのため今度は、提出国の駐日大使館(領事館)の領事から間違いなく日本の外務省による公印確認であるという証明を受けます。この手続きが、「領事認証」です。これでようやく相手国に書類を提出することができます。ただ、この手続きって面倒ですよね。

そこで、手続きを簡略化するために締結されたのがハーグ条約(外国公文書の認証を不要とする条約)です。日本はハーグ条約に加盟していますので、文書の提出先も同じく加盟国であれば外務省の証明を付けるだけで領事認証がある文書と同等のものとして相手国でも通用します。この外務省が行う証明を「アポスティーユ」といいます。

つまり、公印確認とアポスティーユはどちらも日本の外務省で受ける証明(手数料は無料)ですが、手続きのプロセスが異なり、受けられる証明は提出国がハーグ条約に加盟しているかどうかで分れます。公印確認を受けた場合は必ず領事認証も受ける必要があります。

ただ、公印確認とアポスティーユのどちらにしても、書類の中身が日本語のままでは提出先の国側では内容が分からないため、提出国の言語による翻訳文を求められることがほとんどです。この翻訳文を添付する際には、宣言書(翻訳者が日本語と提出先の言語に堪能であり、公文書の記載内容を誠実に翻訳した旨を記載した文書)も添付しますが、宣言書は私文書であるため、先に公証役場で公証人の認証を受ける必要があります。「認証」とは、私署証書の署名(署名押印又は記名押印を含む)が作成名義人本人のものであることを公証人が証明することで、文書の内容の真実性を担保するものではありません。公証人は原則として日本語による認証しかできませんが、サービスとして英訳した認証文を付与してくれるところが多いです。更に公証人の認証を受けた宣言書(公証人認証書)に公印確認またはアポスティーユを受けるためには、その公証人の所属する(地方)法務局長による「公証人押印証明」が必要となります。

ここまで読んで手続きの煩雑さにうんざりされたと思いますが、大阪府内の公証役場では「ワンストップサービス」を提供しています。申請者からの要請があれば、公証人の認証、法務局の公証人押印証明及び外務省の公印確認またはアポスティーユを一度に取得できるため、法務局や外務省に出向く必要はありません。ただし公印確認の場合は、公証役場での手続き後に駐日大使館(領事館)で領事認証を受ける必要があります。

ワンストップサービスによる認証手続きは令和5年6月現在、北海道(札幌法務局管区内)、宮城県、東京都、神奈川県、静岡県、愛知県および福岡県の公証役場でも提供しています。関西では現時点では大阪だけですのでご注意ください。  

これらの認証を取得する際には、提出先はハーグ条約加盟国かどうかの確認は不可欠です。また、提出先がどのような形式を要求しているのか、公文書のみの認証かそれとも私文書を交えた認証か、翻訳文を原本に合綴してよいのか、別々の認証を要求しているのかマチマチですので、事前の確認が必須です。まれに、提出先機関の意向で日本外務省の公印確認ではなく、現地にある日本大使館や総領事館の証明が求められることがあります。可能であれば予めサンプルを提出先から取得して確認するなど、齟齬が生じないように注意が必要です。現地の社員、エージェント、提出先の役所や駐日大使館(領事館)などに確認した上で認証手続きを行ってください。

ちなみに、日本は領事認証制度を採用していませんので、外国の官公署で発行された証明書類に領事認証やアポスティーユを求めることは少ないと思います。少なくとも、法務局では求められません。

 

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