相談事例
CASE
2007.1 山上 の回答
2006年(平成18年)5月1日付の会社法施行後もっとも多い質問が、「取締役会設置のメリットとデメリット」についてです。株式会社はこれまでと同様に、取締役3名と監査役1名(あるいは会計参与1名)を置かないと取締役会設置会社にはできません。その員数を欠くと取締役会を置かない会社となります。
取締役会の役目は、業務を執行する「取締役」を監督することです。取締役会は、株主総会から権限を与えられ取締役を監督します。取締役会がある場合、取締役会に取締役の監督を任せられる分、株主総会の権限は小さくなります。そのため、株主総会は会社法に定められた重要事項と会社の定款で特に定めてある項目についてしか決議できません。(法295Ⅱ)しかし、取締役会がない場合、取締役を選任し、監督する立場にある株主総会の権限が強くなり、株主総会が何でも決議できる万能の機関になります。
したがって、株主総会がもめる恐れのある、第三者株主や少数株主がおられる会社では、取締役会の廃止は慎重にする必要があります。そのような会社では、取締役会を設置したほうが運営しやすいでしょう。
中小企業では、機能していない取締役会が多いのが現実です。法的責任は全ての役員にありますので、名目だけの役員を置かれている場合は、廃止も含めて検討された方が良いかもしれません。取締役会の設置の是非については、自社の株主構成と将来の予測、取締役の顔ぶれを見て、実態に則した判断をすべきだと思います。
既存の株式会社が役員を取締役1名のみとする場合、法務局が職権で取締役会設置会社と監査役設置会社である旨の登記を入れていますので、その廃止の登記にそれぞれ3万円、当然役員構成が変わりますから役員変更登記に1万円(資本金1億円超の場合3万円)の登録免許税が必要となり、実費だけで合計7万円です。
さらに、株式の譲渡制限規定の変更登記や、機関変更に伴う定款の大幅な改訂も必要となりますので、司法書士に依頼すれば登録免許税込みで十数万円の費用が掛かります。
取締役及び監査役の任期を最大10年まで伸長することができるようになりました。任期を10年まで伸長することによって、役員変更の登記が少なくてすみますので、会社にとってコスト削減となるのは事実です。 しかし、10年とするのはオーナー1人が役員となるとき以外は余りお勧めできません。それは、正当な理由なく任期途中で役員を解任すると、残存任期の報酬相当額の損害賠償を請求される可能性があるからです。
離婚に伴い配偶者を解任したり、内紛で兄弟を解任したりしなければならない事態も十分に想定できますのでご注意ください。