相談事例
CASE
2021.7 松尾の回答
相続人が複数いる場合、「誰が」、「どの遺産を」、「どのような割合で」取得するのかは遺産分割協議によって決めます。
遺産全部について一回で分割することが望ましく一般的ですが、一回的に分割することに支障がある場合には、遺産分割を早期に解決するために争いのない遺産について先行して分割すること(一部分割)も可能です。(但し、他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合には一部分割は認められません。)
これまで民法には遺産の一部分割についての規定はありませんでしたが、実務上は運用されており、改正により明文化されました(907条)。
寄与分や特別受益、諸々の事情を考慮せずに一部のみ先に分割することで最終的に不公平な遺産分割となる可能性があります。また、先行する一部分割において、「当該分割の結果をその後に行う残余財産の分割の際にどう反映するのか」を決めていない場合、次のような問題が起こる可能性があります。
母の遺産…不動産(自宅3000万円)と預貯金(5000万円)
相続人…子2人のみ(長男と次男)
残余財産の協議で長男は先行の分割は影響しないとして預貯金5000万円のみをどうするかを主張し、次男は先行の分割は影響するとして不動産3000万円を含めた8000万円をどう分けるかを主張し争いに…。
先行する遺産分割協議書に「①残余財産の分割に影響を及ぼさないものとする」か「②影響を及ぼすものとする」のどちらの趣旨でなしたかを明確に盛り込んでおくことをお勧めします。
①の場合の例
「残余財産については一部分割の結果を加味することなく、別個独立に改めて分割協議を行うものとする。」
②の場合の例
「残余財産については一部分割の結果を加味し、法定相続分に応じて分割協議を行うものとする。」