相談事例
CASE
2018.7 松尾 の回答
お金を貸し借りするための契約を金銭消費貸借契約といいます。
現行民法では、金銭消費貸借契約が成立するためには、実際にお金を貸し渡すこと、つまり、金銭の授受と契約の成立が同時であることが要件となっています(民法587条)。これを要物契約と言います。ただ、実務上は、民法の規定とは別の無名契約として、金銭の授受前の当事者の「貸します」「借ります」との合意だけで契約が成立すること(諾成的消費貸借契約)が認められており、判例も認めています(最高裁昭和48年3月 16 日)。
改正民法では、これまでの要物契約は残しつつ、一定の条件を満たした場合は、当事者の合意のみで契約が成立するようになります。これを諾成契約と言います。
具体的には、書面や電磁的記録(インターネットを通じてのやりとり等)(以下、「書面等」といいます。)によって金銭消費貸借契約を締結したときは、金銭の授受をすることなく、当事者の合意のみで契約が成立することも可能になります。しかし、これにより今後はお金の貸し借りが安易に行われてしまい、トラブルが生じることも懸念されています。
そこで、軽率な契約成立によるトラブルを防ぐため、諾成契約で行う場合は、書面等を作成する必要があります。また、書面等で諾成的消費貸借契約を締結した借主は、貸主から目的物(金銭等)を引き渡されるまでは、契約を解除することができます。これは、借主に借りる義務を負わせない趣旨です。
今回の改正では、電磁的記録での契約成立を認めていることから、例えば、メールのみならずLINEでのやりとりでも契約が成立する可能があります。その場合、どの時点で契約が成立するのか、どうすればLINEのやりとりでの軽率な契約を防ぐことができるかが課題として残っています。