相談事例
CASE
2010.7 担当者 の回答
現在の日本では国民の約9人に1人が消費者金融の利用者で、そのうち約230万人が多重債務者であるといわれています。この多重債務の問題は、貧困や自殺、家庭崩壊、税金滞納などの深刻な社会問題の要因となっており、その背景として、高金利や借主の返済能力を上回る過剰貸付、容易に借入ができるシステムなどが考えられます。そこで、2006年(平成18年)12月に公布され、段階的に施行されてきた改正貸金業法が、2010年(平成22年)6月18日に全面施行されました。貸金業法改正のポイントは、上限金利の引き下げ、総量規制の導入、貸金業への参入条件の厳格化、返済能力の調査義務、ヤミ金融に対する罰則の強化などです。
これまでのグレーゾーン金利(利息制限法の上限金利を超えるが、出資法上の上限金利以下の金利)が撤廃され、出資法の上限金利が29.2%から20%に引き下げられたことにより、利用者の金利負担が軽減されました。また、借主が支払ったグレーゾーン金利について一定の要件を満たせば、その支払を有効とみなす旨の「みなし弁済」制度も廃止されました。利息制限法の上限金利(15~20%)を超えての貸付は刑事罰や行政処分の対象になります。
過剰な貸付を防止するため、原則として個人の借入れ総額は年収の3分の1までに制限されるようになります。複数の貸金業者から借入れがある場合は、合計した金額が年収の3分の1までかどうかを判断します。ただし、住宅ローンや自動車ローンの借入などはこの総量規制の対象から除かれます。3分の1を超過している場合は、原則として新たな借入れをすることはできなくなりますが、直ちに超過分を返済する必要はなく、契約どおりに返済を続けていくことになります。
この総量規制では、個人ごとの借入れが制限されますが、配偶者貸付という制度もあります。配偶者と併せた年収を計算し、その年収の3分の1までに貸付が制限されるというものです。年収の証明が難しい専業主婦(夫)であっても、配偶者と併せた年収の3分の1までであれば、借入れをすることができることになっています。従って、本人が制限額いっぱいまで借入れをしてしまうと、配偶者の借入れも制限されてしまいます。また、配偶者貸付には、配偶者の同意書や夫婦関係を証明する書類が必要となります。
貸金業の適正化のための規制を見直し、貸金業者の最低純資産額を5,000万円に引き上げました。また、日本貸金業協会に対して、広告の頻度や過剰貸付防止等についての自主規制ルールの制定を義務付けました。
貸金業者が借主の総借入残高を把握できる仕組みが整備され、貸金業者が個人に貸付の契約を締結しようとする場合は、指定信用情報機関の信用情報を利用した返済能力調査が義務付けられました。
さらに、貸金業者が自社の貸付残高が50万円を超える貸付を行う場合又は他の貸金業者を含めた総貸付額が100万円を超える貸付を行う場合には、借主の収入を明らかにする書面の提出が求められます。
ヤミ金融は、貸金業法に基づく登録を受けずに、違法に貸金業を営む業者のことで、違法な高金利の貸付や借主に対する過剰な取立てを行うものもあります。登録を受けた貸金業者ではありません。今回の貸金業法の改正では、上限金利が引き下げられることにより、ヤミ金融から借りてしまう人が増えるのではないかとの懸念が指摘されていたため、ヤミ金融に対する罰則を強化し、撲滅に向けて対策を講じています。
今回の貸金業法の改正では、貸金業者からの借入れだけでなく、クレジットカードのキャッシングも対象になっています。また、ショッピングについても、割賦販売法の改正により、支払可能額見込額の算定が義務付けられ、買い物の利用枠に制限がかかることがあります。従って、全く収入のない専業主婦(夫)の場合は、特にこれからのクレジットカードの利用については注意が必要となります。
以上のように、今回の貸金業法の改正により、貸金業者からの借入が難しくなるケースが増えると考えられます。しかし、だからといってヤミ金に手を出すと、さらに経済状況は悪くなるばかりです。絶対にヤミ金には手を出さず、法的手続きによって解決することが大切です。