相談事例
CASE
2011.7 (2019.4 修正) 担当者 の回答
「自分が将来認知症になったら、病院や介護サービスはどうすればいいの?」
「そもそも誰が気付いてくれるの? そのまま孤独死なんてことも・・・」
頼れる身寄りのない方や親戚が遠方に住んでいる方などは、このような心配をされることがあると思います。判断能力が衰えた場合、病院のことや介護のことを自分で決めるのは難しいです。もちろん、こういったことに限らず、預貯金や株式などの財産管理・役所関係の届出なども同じです。このような場合に、自分の代わりに難しい判断や手続をしてくれるのが、「後見人」です。
後見人は、①裁判所が選ぶ ②自分で選ぶ、のどちらかです。裁判所が選んだ人を「法定後見人」、自分で選んだ人を「任意後見人(任意後見受任者)」といいます。どちらも、未成年者や破産者など後見の欠格事由に該当しない限り、資格は限定されていません。法定後見人の場合、全体の23.2%(平成30年)が親族から選ばれ、それ以外は司法書士、弁護士、社会福祉士等の第三者が選ばれています。自分で選ぶ場合は、自分が最も信頼できる人を選べばいいのです。
(詳しくは「成年後見人が選任されたら、その後は身内が何もしなくてもよくなるのでしょうか?」をご参照ください)
「法定後見人」、つまり裁判所が選ぶ後見人ができること(後見業務)は、民法で決められています。基本的には財産管理や契約締結(病院選びもこの中に含まれます)、身上監護など、ほとんどのことができます。
「任意後見人」、つまり自分で選ぶ後見人も同様ですが、「法定後見人」と異なるのは、このようにして欲しいという自分の意思を反映させることができるということです。
「後見人にお世話になるのはいいけど、あんまり過度に延命措置などしてほしくないわ」
「思い出の品は、自分が老人ホームに入ってしまっても、売らないでほしい」
たとえ認知症になったとしても、個人的な好みや人生設計は恐らく変わることはないのではないでしょうか。しかし、このような希望は、必ずしも後見人が容易に汲み取れるものではありません。
「法定後見人」は、判断能力が衰えてから裁判所に選任されます。身内が選ばれたならまだしも、そうでないケースならば、自分の希望を正確に伝えるのは、ほぼ不可能といってよいでしょう。
一方で「任意後見人(任意後見受任者)」は、判断能力がしっかりしている時から自分で選ぶことができます。正確には、一方的に選ぶのではなく、「任意後見人」となる人、つまり任意後見受任者との間で契約を交わすことになります。ですから、この契約のときに、自分の希望を契約書やライフプラン(詳しくは「「ライフプラン」とはなんですか?」をご参照ください)の中に落とし込むことができるのです。
ところで、任意後見人は、契約を結んで即後見人になるというわけではありません。ここで、法定後見開始・任意後見開始までの流れをご紹介します。
ざっとまとめますと、次のとおりです。
① 法定後見人・・・裁判所が選ぶ。本人に代わって財産管理や身上監護をしてくれる。
② 任意後見人・・・自分で選ぶ。本人に代わって財産管理や身上監護をしてくれる。自分の意思が反映できる。
任意後見契約は結んだけれど、認知症になったことをそもそも気付いてもらわなければ契約を発効することはできず、結局助けの手は差し伸べられないということになってしまっては困ります。このようなことを防止するために、任意後見契約と同時に、当方では「見守り契約」を締結しています。毎月、電話や面談を通じて、元気かどうか、判断能力に衰えはないかなどを確認しています。
また、「判断能力には問題がないので後見制度の利用はできないけれど、身体的に銀行に行くのは困難、ややこしい財産管理は誰か他の人に代わりにして欲しい」という方とは、「財産管理等委任契約(任意代理契約)」を締結することもできます。