相談事例
CASE
2025.1 松尾の回答
合同会社(LLC)とは2006年(平成18年)の会社法施行により新設された会社形態ですが、設立件数は年々増加しており、2023年(令和5年)には約4万件と最も多い株式会社の約10万件と比べても半数近くにまで伸びています。中小企業に多いイメージの合同会社ですが、近年Google、アマゾンジャパン、Apple Japanなど世界的な大企業が日本法人として合同会社を選ぶケースも多く、一般の認知度も高まってきているように思います。
当法人でも会社設立のご依頼では株式会社と合同会社のどちらを選ぶべきか相談を受けることが多いため、合同会社について株式会社と比較して説明します。
設立にかかる費用が少なく(設立登記の登録免許税が少額、定款認証が不要)、最短で依頼翌日の設立も可能です。決算公告の義務がなく(毎年の決算公告の費用が不要)、役員任期もないため(任期満了に伴う役員変更登記が不要)、維持コストも抑えられます。
出資比率に関係なく、自由に利益配分が可能です。
株主総会もなく、出資者間で直接合意できます。
株式会社に比べ、対外的な信頼性で劣ると言われますが、業界や取引先によっては評価が異なります。
出資者全員が経営に携わることが前提であり、権限分担が曖昧になりがちです。
株式発行という手段がないため、大規模な資金調達が難しい場合があります。
消費者の多くは会社の形態よりも商品やサービスを重視することから、一般消費者向けの小売・サービス業(BtoC事業)、資金調達の可能性が低い小規模事業、会社の種類が外部に強く意識されない資産管理会社や機動的な経営のため意思決定を迅速に行いたい会社などは合同会社に向いていると言われています。
事業の内容、出資者、どの程度の資金が必要か、将来の展望など十分検討して最適な会社形態を選ぶことが大切です。
項目 |
株式会社 |
合同会社 |
出資者 |
株主 |
社員 |
出資者の責任 |
間接有限責任 |
間接有限責任 |
所有と経営 |
分離 |
一致 |
意思決定機関 |
株主総会 |
法定の会議体なし 原則:社員の過半数の同意 定款変更 原則:社員全員の同意 |
業務の執行 |
取締役 |
原則:社員全員 |
資金調達 |
株式発行、社債発行、借入など |
社債発行、借入など |
設立費用 ※1 |
高め |
低め |
決算公告 |
必要 |
不要 |
定款認証 ※2 |
必要 |
不要 |
運営の自由度 |
比較的低い |
高い |
※1 「特定創業支援等事業」による支援を受けた場合、登録免許税が上記の半額になります。
※2 2024年(令和6年)12月1日に施行された公証人手数料令の一部を改正する政令(令和6年政令第353号)により、定款認証手数料の一部が以下のとおり改定されました。
資本金の額等が100万円未満の株式会社が、次の⑴から⑶までのいずれにも該当する場合 (1) 発起人の全員が自然人であり、かつ、その数が3人以下であること。 (2) 定款に発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨の記載又は記録があること。 (3) 定款に取締役会を置く旨の記載又は記録がないこと。 定款認証の手数料 改定前:3万円 → 改定後:1万5,000円 |