相談事例
CASE
2008.1(2019.4修正) 櫻井 の回答
遺言書を是非とも書いていただきたい方をケースごとにご紹介します。
夫婦のどちらかが亡くなったとき、残された配偶者には相続権は4分の3(親が健在であれば3分の2)しかありません。遺言書がないと、相続財産(不動産、有価証券、預貯金等)を残された配偶者一人の名義にするためには、亡くなられた方のご両親や兄弟姉妹、運が悪ければ甥や姪の印鑑が必要になります。何が起こるかわからない昨今、年齢は関係ありません。預貯金が凍結され生活費は出せない、夫婦二人で築いた自宅でさえ印鑑がもらえないため自分の名義にできず、余りの理不尽さに情けない思いをされている妻の姿を多く見てきました。
直系尊属(親、祖父母等)が亡くなっている場合、相続手続きには兄弟姉妹(先に亡くなった兄弟姉妹がいる場合はその甥姪)全員の印鑑が必要となります。相続人の人数が多くなると、相続手続きは大変です。ご自身が長寿を全うできた場合、当然兄弟姉妹も高齢で、その中に認知症などのため判断能力のない方がいる確率も高くなります。相続人の中にそのような方がいると、その方に成年後見人を選任しなければ相続手続きができません。しかし、その方の相続分が数万円とごくわずかだと成年後見人の選任をお願いすることもできず、塩漬けになっているケースは沢山あります。遺言書さえあればそんな煩雑なことは回避できます。
事業承継がうまくいかないと、後継者のみならず、従業員の方にも大きな影響がでます。もちろん、事業承継の問題は会社法の活用、生前贈与、死因贈与、遺留分の放棄などと組み合わせて総合的に考えなければ大きな効果は挙げられません。ただ、遺言書の作成は遺言者単独で手っ取り早くできる対策であり、状況が変われば単独で何度でも変更できる便利なものですから、他の対策が実現するまで先ず第一弾として書いておかれてはいかがでしょうか(寿命だけは誰にも分かりませんので)。なぜなら相続人間の仲が悪いと、遺産分割協議に何年もかかることがあります。その間、経営者の持っていた自社株は相続人全員の共有状態となり、後継者は議決権の行使すらままならなくなります。遺言書で後継者に自社株を相続させることは重要です。
(2018年(平成30年)に時限措置として事業承継税制の特例措置が創設されましたが、要件に該当しない企業もあります。)
さあ、今年こそ最愛の人のために、重たい腰を上げて遺言書を作成してみませんか。ただ、せっかく書いた遺言書が様式の不備で無効となっては意味がありません。作成の仕方についてはお気軽にお問い合わせください。