相談事例
CASE
2010.1 担当者 の回答
NPO法人は、1998年(平成10年)12月1日に施行された「特定非営利活動促進法」(以下、「NPO法」といいます。)によって法人格を付与された法人で、構成員に利益分配せず、自発性を持った活動組織のことをいいます。法人格を取得するメリットとして、法人の名義で契約を締結することや、不動産の登記をすることができますし、社会的信用が向上することも挙げられます。逆に、申請時や毎年度、所管庁に対して各種書類の提出義務が生じ、運営面においてNPO法に従わなければなりません。NPO法人の所管庁は、原則として事務所所在地の都道府県知事であり、2つ以上の都道府県に事務所を設置する場合は内閣総理大臣になります。
NPO法人とボランティア団体がよく混同されますが、NPO法人は必ずボランティア活動をしなければならないことはありませんし、ボランティアで運営されるものでもありません。もっとも、NPO法人はどのようなことをしてもよいというわけではなく、設立するにあたっていくつかの要件が課せられています。特に大きな要件は、法人の主たる目的が法律で限定されていることです。
NPO法人は、NPO法に定める17種類の特定非営利活動のいずれかに該当する活動を目的とし、かつ、社会全体の利益の増進に寄与することを目的としなければなりません。NPO法は、市民が行う草の根的な社会貢献活動を行う団体に対して広く法人格を付与するための法律ですから、NPO法人として活動する目的は限定されており、目的の種類は、以下のいずれかである必要があります。
① 保健・医療又は福祉の増進を図る活動
② 社会教育の推進を図る活動
③ まちづくりの推進を図る活動
④ 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
⑤ 環境の保全を図る活動
⑥ 災害救援活動
⑦ 地域安全活動
⑧ 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
⑨ 国際協力の活動
⑩ 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
⑪ 子どもの健全育成を図る活動
⑫ 情報化社会の発展を図る活動
⑬ 科学技術の振興を図る活動
⑭ 経済活動の活性化を図る活動
⑮ 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
⑯ 消費者の保護を図る活動
⑰ 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
また、活動の利益を受ける者が限定されず、社会全体の利益のために活動しなければなりません。このため、NPO法人が実際に行う事業は、上記の目的を達成するためのものである必要があります。例えば、「環境の保全を図る活動」を目的とする場合は「植林事業」や「川や山林の清掃事業」などが考えられます。
「学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動」を目的とする場合は、「演劇、映画に関する情報の収集及び発信」や「伝統芸能のイベント開催」などが該当するでしょう。NPO法人設立に際しては、事業計画書や収支予算書を提出する必要があるため、具体的にどのような目的でどのような事業を行う予定なのかを予め決めておかなければなりません。
他の要件として、営利を目的としないこと(NPO法人が収益をあげてはいけないという意味ではなく、事業を行うことで得た収益を構成員に分配してはならないという意味です。得た収益は特定非営利活動のために使用することになります。)や法人の構成員である社員が10名以上いること、役員として理事3名以上、監事1名以上を置くことなどがあります。社員の資格に関しては、その得喪に関して、不当な条件を付さないことも求められます。NPO法人はその性質上市民に対して開かれた団体であるべきなので、社員の加入・脱退に関して制限を設けることはできません。基本的には当該NPO法人の活動の趣旨に賛同する者の入会を妨げることはできないと考えられています。入会にあたって、入会金や会費の徴収は認められていますが、それも不当に高額な設定をすることはできないようです。その他、役員の親族等の人数制限や報酬制限などがあります。
NPO法人のうち、運営組織や事業活動が適正であること及び公益増進に資することについて一定の要件を満たすものとして国税庁長官の認定を受けると、認定NPO法人として税法上の特例措置を受けることができます。これは、過去5事業年度分の実績(2010年(平成22年)3月31日までの申請の場合は2事業年度分で可。)を審査し、要件を満たしていると判断されたNPO法人に認定が与えられるものですが、全国約3万5000件設立されているNPO法人のうち、2009年」(平成21年)11月1日現在認定の有効期間内にある法人は約100法人しかありません。認定を受けるには、非常に厳しい要件が課せられているといえます。
2008年(平成20年)12月1日から「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」(以下、「一般法人法」といいます。)が施行され、一般社団法人が設立できるようになりました。この一般社団法人は、NPO法人のように事業目的が17項目に制限されず、監督官庁もなく、定款の認証と登記によって成立します。また、設立にあたっては、社員は2人以上いればよく、役員も最低限理事1名を置けばよいとされています。
また、一般社団法人においても、一定の要件を満たすものは「非営利型法人」として税務上有利な取扱いを受けることができます。非営利性(事業により得た利益を分配しないこと)が徹底されていること、又は共益活動(会員から受け入れる会費によって会員共通の利益を図るための事業を行うこと)を目的とすることが主な要件とされており、さらに各理事についての親族制限も課せられています。
近年、公益法人に関する法制度は大きく改正されており、比較的簡易・迅速に法人格を取得することができるようになっています。目的や規模、事業内容などをよく検討し、法人化を考えてみるのもいいかもしれません。
NPO法人は市民に身近な存在で、社会的認知度も高い法人形態です。設立をご検討の際は、是非お問い合わせください。ただ、設立には所管庁の審査や関係書類の縦覧等があり、数か月の期間を要しますので、ご注意ください。